第1回担当者会議

5.損益計算と財産計算

[ 用語の意味・背景 ]
経営成果を総括する上で整理が不可欠な資料として損益計算と財産計算があります。前者の記録が「損益計算書」であり、後者の記録が「貸借対照表」です。

[ 概 要 ]
経営成果を経済的に把握するための一般的な形として、一定期間の経営収支から所得あるいは利潤を産出する方法が広く用いられています。これを損益法と呼び、一定期間の収入と支出の動きをそのつど記録して累計するので動態的計算法とも言われます。その記録が損益計算書です。

 もう一つの方法として、一定期間の期首と期末の財産の有り高を把握して両者を比較し、その差額として利益をとらえる方法があります。これを財産法とよびます。定まった特定時点での財産を抑えるので静態的計算法とも言われています。その記録が貸借対照表です。

1.損益計算書
損益法による記録を集計整理したものが損益計算書です。その内容・作成手順は、これまで説明してきた経営収支と同様で、所得税申告決算書の作成と同じです。企業経営が規則に基づいて損益計算書を作成する場合は、表1のような標準様式に従うことになっており、科目の設定方法に若干の差がありますが、実質は同じです。

 注意すべき点は、最下段の当期純利潤の産出で、企業経営では利潤額をそのまま計上すれば良いのですが、家族経営では農業所得から家計費(専従者給与を家計費の他に支出している場合は、それを加算する)を差し引いたものが農家経済余剰になります。

2.貸借対照表
財産法による記録結果を整理したのが貸借対照表です。農業経営が保有する財産は、土地・建物・機械・現金・現物・預金等々の具体的な形で把握できる資産と、それらの資金的裏付けになっている自己資本、及び短期・長期の借入金等の負債の二つの側面から捉えています。

 資産は負債と自己資金とで構成されているので、表2のように、資産を借方として表の左側に、負債と資本を貸方として右側に整理したのが貸借対照表です。

 損益計算では計算期間の損益は出せますが、その結果、経営の財産がどのように変化したかは的確に把握できません。経営期間の拡大が健全な形で進んでいるかどうかを判断するには、財産の内容とその動きを正確に把握することが基本であり、そのためには財産計算を行って、その結果を分析することが必要です。